017 急展開(1987)

昭和62年8月、入院生活丸10年がたった。
ある夜、両親と姉が病棟に来て話があると病院の玄関のソファーが並ぶ受付の所まで連れ出された。夜なので誰もいない。受付の所に着くまで何の話か聞いても何も答えない。
母が手術が必要かもと病院を数件回っていると少し前に聞いたのでその話で手術が必要になったのかと心配になった。
受付の所に着くと父が話し出した。
簡単にまとめると詐欺に遭い順調にいってた会社もだめでみんなで都会に出て暮らす。仕事は引っ越ししてから探す。と言う事だ。
俺は病院生活は嫌だという事は前に少し話していたので引っ越し後は家で暮らしていいという話だ。
母は手術は必要ないそうで安心した。
それにしてもびっくりな話を聞かされたが母がなんともなかったのが一番良かった。
それで引っ越しは明後日。話し終わると俺を病室に戻し帰って行った。
狐につままれたような感じとはこのことを言うんだなと思った。
家で暮らしたいという願いは意外な事でかなった。
後日、友達みんなに説明しないといけないけど驚くだろうな。
次の日、昼食前に挨拶をした。
父の仕事の都合で大阪の方へ引っ越すと。
ちょっとざわついた。みんなびっくりしてる。
それで俺に一言代表で8才くらい上の先輩が言葉をかけてくれる事に。
突然聞かされて驚いていますの後、言葉が止まった。
どうしたのかなと思ってみると先輩は泣いていた。
特別仲が良かったわけではなく、いつも俺がいじられてるような感じだった。
今思えばあれがあの人の愛情表現だったんだなと思う。
その日の晩は仲がいい友達と突然の別れを惜しみながら色々話した。
退院日当日、病棟の友達のほとんどが外まで見送りに出てきてくれた。
そんな事はかつてなかった。
車が出る時は「みねおくん元気でねー」というみんなの声が聞こえた。

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